アナハイム・エレクトロニクス社
アナハイム・エレクトロニクス社(Anaheim Electronics) 編集
宇宙世紀を代表する巨大企業。通称はAE。単に「アナハイム」と略される場合もある。
北米アナハイムに本社を置き、月を主な拠点として「スプーンから宇宙戦艦まで」をキャッチコピーとする巨大コングロマリット企業。主要拠点が月にある為、どちらかというとスペースノイド寄りの思想が強く、グリプス戦役ではエゥーゴを支援した事からもその姿勢が伺える。
元々は家電メーカーとしてその名を知られていたが、一年戦争を機に軍需産業に進出。当初は部品発注や組み立て等の下請けを主としていたものの、戦後ジオニック社やハービック社に代表される連邦・ジオン双方の軍事企業を吸収合併した事でMS開発技術を入手。兵器開発・製造業に本格的に手を付け、デラーズ紛争、グリプス戦役を経て地球圏の兵器市場をほぼ独占するようになった。特にモビルスーツ開発事業に参入して以降は連邦軍の兵器受注のトップを占めるが、一方でデラーズ・フリート、ネオ・ジオン、マフティーなど連邦と敵対する勢力との取り引きも多く、その様子から「死の商人」とも揶揄される[1]。
グループ会社を含めた事業内容は家電の他に工業、輸送、発電、通信など多岐にわたり、軍事産業はそのうちの一つに過ぎない。軍事産業が占める利益もグループ全体からすれば微々たるものであり、むしろそのスピンオフ技術から生み出される民生用MSや作業機械の利益の方が大きい[2]。また、一時期はブッホ・コンツェルンを下請けとして提携していた時期もあり、クロスボーン・バンガードのMSの部品もアナハイムから調達されている。
地球・宇宙双方に多数の拠点を持ち、その企業規模の与える影響力は非常に強い。またサイアム・ビストによって設立されたビスト財団とも並みならぬ関係を持ち、地球連邦政府に与える影響力は一企業の範疇を越える。
度重なる戦乱で長らくモビルスーツ産業のシェアを独占し、MSの大型化やそれによる艦艇の新造は同社にとって望ましい収入場となっていたが、小型モビルスーツ開発でサナリィに遅れを取った事でその影響力に陰りを見せている。宇宙世紀0100年代のアナハイムは風通しの悪さで有名であり、混迷した戦乱状況下、全方位外交を取らざるを得なかった同社がクリーンルームデペロップメントを推し進めた秘密主義に徹したのは当然の流れであった。そのために円滑な情報伝達が阻害され、開発の二度手間が日常茶飯事で新技術が埋もれることも多かったが、シルエットフォーミュラプロジェクトによるサナリィからの技術盗用によって同等の技術力を確立するに至っている。
先進技術による高スペックを重視するサナリィに対し、長い時間を掛けて培ってきた生産力や信頼性についてはアナハイムが有利であった為、宇宙世紀0120年代の主力MS開発はアナハイムが行う事になった。この頃のアナハイムはMS産業の独占・寡占に価値を見いださなくなっており、MSの生産数低下を理由にMS産業全体の維持を目的に競合他社との共存共栄路線に舵を切った。この際に行われた周辺企業へのOEM供給、生産拠点の均質化と分散が、リガ・ミリティアによるV計画の実施を可能とする下地となっている。
登場作品 編集
宇宙世紀作品 編集
- 機動戦士Ζガンダム
- 初登場作品。思想的に近いエゥーゴに出資し、自社で開発したモビルスーツや戦艦を提供すると同時にΖ計画を主導。時としてスポンサーとして組織の活動に口を挟む事もあった。一方、ガンダムMk-II強奪に関与した嫌疑から目をそらす目的でティターンズにもマラサイなどの兵器を提供している。
- 機動戦士ガンダムΖΖ
- グリプス戦役後も引き続きエゥーゴに出資し、ΖΖガンダムをアーガマへ配備する一方、ネオ・ジオンと取引したりジオン共和国向けにシュツルム・ディアスを開発・供与している。
- 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
- 第一次ネオ・ジオン抗争を経てMSの開発主導権を事実上独占。独立採算制を隠れ蓑に、νガンダムやジェガンなど連邦軍系MSをフォン・ブラウン工場で、サザビーやギラ・ドーガなどのネオ・ジオン系MSをグラナダ工場で開発・製造して供給している。
- 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
- 第5世代MSとしてペーネロペー及びΞガンダムを開発。ミノフスキークラフト(ミノフスキー・フライト)やサイコミュを搭載したハイエンド機となったが、それ故に機体の大型化を招くようになった。
- 機動戦士ガンダムF90
- サナリィの提言を受けた連邦政府の小型MS開発推進を受け、ヘビーガンを開発。しかし、サナリィの要求性能を満たさなかったため、サナリィは独自のMS開発を模索し始めることになる。その後、連邦軍のATMS計画に則りアナハイムは次期主力機としてMSA-120を開発。しかし、サナリィのガンダムF90とのコンペティションで敗北を喫し、新型MS開発の主導権を奪われることになった。
- 機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY
- 一年戦争後、連邦軍が主導するガンダム開発計画でMS開発事業に参入。しかし、デラーズ紛争によって計画に関わる記録や技術は封印され、一時はMS事業からの撤退すら考慮された。
- 機動戦士ガンダムF91
- サナリィに小型MS開発で遅れを取ったものの、MS開発では依然としてシェアを維持しており、ジェガンやヘビーガンなどの生産・供給が続けられている。また、クロスボーン・バンガードの運用するMSのパーツもアナハイムから作業用MS生産の名目で調達されていた。
- 機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91
- 小型MS開発でサナリィに遅れを取ったため「シルエットフォーミュラプロジェクト」を発動。更に元提携企業だったブッホ・コンツェルン(クロスボーン・バンガード)と接触・技術交換し、小型MS用革新技術を黙々と獲得していた。しかし、その後「ゼブラゾーン事件」が発生。一連の事件を受け、プロジェクトはAE社上層部によって凍結されている。
- 機動戦士Vガンダム
- 連邦軍でジェムズガンやジャベリンが運用されており、Vガンダムやガンイージといったリガ・ミリティアの機体もアナハイムの工業力によって開発・生産が行われている。
- アナハイム・ジャーナル
- アナハイム・エレクトロニクス社の広報誌(の形式を取った資料集)。同社で開発した諸技術の解説や、グループ企業の解説、当時の社会情勢等が語られている。
- 機動戦士クロスボーン・ガンダム 鋼鉄の7人
- 小型MS開発の遅れを挽回するべく木星戦役で轟沈したマザー・バンガードの帆を回収し、それをベースとしたスピードキングを開発しテストを行っていたが、テスト中の事故によってグレート・キャニオンへ墜落。同機はサナリィによって回収され、鋼鉄の7人作戦の中核として運用された。
- 機動戦士ガンダムUC
- シャアの反乱後、連邦軍の極秘計画であるUC計画の一翼を担い、ユニコーンガンダムを開発。加えて連邦政府やビスト財団との共生関係、及びそれを成立させている「ラプラスの箱」についての真実が語られる。
- 機動戦士ガンダムNT
- νガンダム以前にサイコフレーム試験機としてナラティブガンダムが開発されていたことが語られている。同機はラプラス事変後にルオ商会に試験委託するという名目で「不死鳥狩り」で運用されており、最新鋭機ではなく倉庫で眠っていた機体を転用するなど、その影響力に陰りが見えていることがうかがえる。
- 機動戦士ガンダムF90FF
- シルエットフォーミュラプロジェクトの一環として連邦軍内にウジャトアイズを組織し、ファステスト・フォーミュラの監視を行わせた。また、MSA-120に関してもコンペティション後に6機が追加生産されたことが語られ、その内7、8号機がレガシィの襲撃を受け行方不明となり、そのうちの1機がサイファーの乗機として運用された。
アナザー宇宙世紀作品 編集
- 機動戦士ガンダム THE ORIGIN
- 機動戦士ガンダムの展開とは異なり、ガンキャノンとガンダムを開発した企業として設定されている。
- 機動戦士ガンダム サンダーボルト
- レヴァン・フウがソーラ・レイシステムを奪取し、月面の本社を攻撃する計画を企てた。レヴァン・フウ曰く「世界に邪悪を撒き散らす元凶」とのことだが、一方で地球環境の再生を見越したテラリウムとしてフォン・ブラウンを建造した事が語られており、その為にフレミング・インダストリー社とも強いパイプを持つ。本作でもガンダムの開発メーカーはここになっており、更にガンダムMk-IIの量産も進めていた。
- 連邦軍が南洋同盟を阻止する力がないと判断すると、連邦軍との協力関係を破棄し、月面都市による独立国家「タイタンズ」の建国を宣言。連邦軍と南洋同盟に対して宣戦布告する。
- 機動戦士Gundam GQuuuuuuX
- 第7話で名前のみ言及。一年戦争でジオン公国が勝利したため、ジオニック社の吸収合併は行っていないが、ジオニックやサイド6のワンナヴァルに匹敵する企業としてその名が知られている。
構成員 編集
- メラニー・ヒュー・カーバイン
- グリプス戦争期から第二次ネオ・ジオン紛争期までのCEO。
- ウォン・リー
- 幹部。エゥーゴとのパイプ役。
- オサリバン
- デラーズ紛争期に常務役を務める。
- ニナ・パープルトン
- フォン・ブラウン支社の社員。試作ガンダム1号機・2号機担当システムエンジニア。
- ポーラ・ギリッシュ
- ルセット・オデビー
- アイリス・オーランド
- シルエットガンダム担当のエンジニア。
- エマリー・オンス
- メッチャー・ムッチャ
- 第一次ネオ・ジオン抗争時のエゥーゴの指導者。
- ミリィ・チルダー
- ラビアンローズのスタッフ。エゥーゴ、ネェル・アーガマ、果てはキマイラ隊と、派遣先に恵まれない模様。
- フークバルト・サマター
- 主計局次長。ミリィと共にキマイラ隊に派遣される。
- マーサ・ビスト・カーバイン
- 社長夫人にして、ラプラスの箱の守り手であるビスト家の血族。連邦の繁栄を名目に、軍を強引に動かしてユニコーンやミネバを掌握しようと画策していた。
- アルベルト・ビスト
- 宇宙世紀0096年における、本社の幹部役員の1人。叔母であるマーサの腰巾着に近い存在で、実力の他にマーサと癒着する事で高い地位を得た。
開発・製造機体 編集
ガンダム開発計画 編集
Ζ計画 編集
- リック・ディアス
- エゥーゴ向けに開発されたドム系から発展した機体。
量産機 編集
計画以外で開発された機体 編集
- ガンダムMk-III
- ル・シーニュ
- オーヴェロン
- ファーヴニル
- 高機動型ゲルググ (ジョニー・ライデン中佐機)(U.C.0090時)
- 高機動型ゲルググ (ユーマ・ライトニング大尉機)(U.C.0090時)
- ゲルググ・ウェルテクス
- ガンダムMk-II(ヴァースキ機)
- μガンダム
- ナラティブガンダム
- νガンダム
UC計画 編集
第5世代機 編集
シルエットフォーミュラプロジェクト 編集
その他 編集
関与が疑われている機体 編集
THE ORIGINにおける設定 編集
開発艦船 編集
自社商品など 編集
- Mobile Suit GUNDAM MSVS
- 1999年8月26日発売のワンダースワン用ソフト。AE社製のMSシミュレーターという設定。
関連地名 編集
- フォン・ブラウン
- 月の表側に位置する月面都市。郊外に自社ビル「アナハイム・ビル」を持つ。最重要拠点。リバモア工場など連邦軍向け機体の開発拠点もこちらに有る。
- グラナダ
- 月の裏側に位置する月面都市。元はジオニック社の開発・生産拠点を接収した工場を有し、エゥーゴやネオ・ジオン向けの機体を開発した。また、開発設備の警戒レベルはフォン・ブラウンよりも上であり、武装警備員も常駐している為、機密性の高い機体[3]は連邦系の機体であってもこちらで開発されている。
- アンマン
- グラナダ近郊の月面都市。エゥーゴ用拠点の一つでもある。ネモなどはここの工場で開発された。
- ラビアンローズ / ロサ・ギガンティア
- アナハイム保有のドック艦。それ自体がMSの開発拠点としても機能する。
- 茨の園
- デラーズ・フリートが建造した宇宙基地。内部には戦艦や巡洋艦のドックやMS生産工場を備え、ドラッツェ等が生産されていた。デラーズ紛争後はアナハイムに接収され、大規模な改修工事を経て極秘開発拠点及び生産工場として運用されている。
関連組織 編集
- ビスト財団
- 地球連邦軍
- エゥーゴ
- ティターンズ
- ネオ・ジオン
- サナリィ
- ブッホ・コンツェルン
- 元はAE社の下請けをしていた。独立してからもAEとの繋がりは続いており、クロスボーン・バンガードの機体生産用の部品はアナハイムから調達している。