アクシズ・ショック(AXIS Shock)
第二次ネオ・ジオン抗争終盤、νガンダムに搭載されたサイコフレームの共振によって、地球に落下するアクシズが押し返された現象。誰が言い出したかは不明だが、物理法則を無視し、世界のパワーバランスを崩しかねないその現象はまさに衝撃的であり、戦後数カ月後には連邦軍の上層部でその名で浸透していた。
連邦軍調査班はアクシズの落下による地球の壊滅という恐怖を前に人類全体が共有した危機感が無意識的にνガンダムへ集積され、サイコフレームを依り代に膨大なエネルギーに転化したという見解を出している[1]。だが、アムロ・レイとシャア・アズナブルという二人のニュータイプを人柱に人類の集団無意識がサイコミュによってエネルギーに転化されたとする発表はジオニズムに血肉を与える「神の御業」に他ならず、対ジオニズム闘争を宗教戦争に発展させる事を望まない連邦政府としてはそれを否定する必要があり[2]、連邦政府は当事者の一人であるブライト・ノアを抱き込み、「アクシズの軌道が逸れたのはロンド・ベルの作戦が成功したからであり、その際の発光現象は爆発で飛散した破片が大気の摩擦熱で焼かれ生じたもの」と発表した。
しかし、事の発端となったサイコフレームは連邦軍のUC計画下で開発が続行され、人々はラプラス事変で再びアクシズ・ショックに比肩する衝撃を目撃する事になった。
登場作品
- 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
- 本現象の初出作品。この時点ではまだ「アクシズ・ショック」の呼称は用いられていない。物語最終盤において、アクシズに取り付いた機体群が摩擦熱とオーバーロードで自爆する光景を見たアムロの悲痛な叫びに誘発される形で発生。アクシズを地球から引き離したサイコフレームの燐光はサイコフレームと共に宇宙の彼方へと流れていった。
- 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン
- 劇場版同様、アクシズを押し返す際にνガンダムから白い光が放たれているが、その理由が漠然としたものになっており、「サイコフレームが共振したのかも知れない」「ベルトーチカのお腹の赤ちゃんが呼んだのかも知れない」「アクシズの空域に集った男たち女たちの意思が、それらの光を呼び寄せて、吸い込んでいるのかも知れなかった」等の推測がなされている。また、これを目撃したベルトーチカには「命があるからこそ、光が発する」という認識が芽生えている。他にも映画でアクシズ落下の際に唐突に現れた一般兵たちに対する掘り下げが行われており、ベルトーチカの胎児がサイコ・ドーガのビームから機体を守った瞬間、何かに触発された各方面の兵士達がアクシズ落下阻止のための行動を起こす、という展開になっている。
- 機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY
- 原作ゲームのエンディング (Aランク)を下地にした小説のプロローグにおいて、ユウ・カジマがνガンダムと共にアクシズを押し、ガンダムから放たれる光を見たユウがかつて出会った少女と彼女が見せた「蒼い宇宙」を思い出すという描写が描かれた。以降の作品でも同様の設定が描写される事が多い。
- なお、同小説では『逆シャア』で「アクシズ表面から引き剥がされそうになったギラ・ドーガにジェガンが手を差し伸べる」シーンにおけるジェガンパイロットがユウであると思わしき描写がされている。
- 機動戦士ガンダム ANAHEIM RECORD
- 第3巻の「証言」において、AE社が異常現象に対する検証として、目撃者に対する証人尋問を行っている。
- 機動戦士ガンダムUC 虹にのれなかった男 Bright Noah Story
- シャアの反乱後、連邦政府が開いたブライト・ノアに対する査問会の様子が描かれており、ブライトはロンド・ベル司令としての続投を条件に連邦軍上層部にアクシズ・ショックへのNTの関与否定を約束した。しかし、これは後に現れるであろう新たなNTを守る為にアムロらの幻影に背中を押される形で取った選択であった。
- なお、戦後の調査や、連邦が同現象に対する情報操作に至るまでの経緯なども本作で語られている。
- 機動戦士ガンダムUC
- 「アクシズ・ショック」の名称の初出。これ以降、他作品でも同名称が用いられるようになる。作中においてもユニコーンガンダムが本現象に類似した発光現象を発生させており、「ガランシェールを牽引し大気圏離脱を成功させる」「コロニーレーザーをサイコ・フィールドで防ぎきる」「手をかざしただけでMSの熱核融合炉を"時を戻した"ように分解する」等の超常現象を引き起こしている。
- 機動戦士ガンダムNT
- 原案である『不死鳥狩り』からの設定変更に伴い、イアゴ・ハーカナに「アクシズ・ショックの目撃者」という設定が追加された。
- 機動戦士ガンダム Twilight AXIS
- 本現象を受けてサイコフレームを危険視した連邦軍が調査を目的にマスティマを、ブッホ・ジャンク社がサイコフレームと関連資料の回収を目的に私兵武装集団バーナムをアクシズの残骸へと派遣。両者共に事情を知らないまま交戦状態に陥り、結果サイコフレームや関連資料の回収はならなかった。
- 機動戦士ガンダム クライマックスU.C. 紡がれし血統
- カムナ・タチバナの視点で同現象が描かれた。ロンド・ベルの一員として戦闘中、カムナはネオ・ジオンに降った元部下のパミル・マクダミルと再会。和解したパミルを加えアクシズを押し返すために奮闘した。
- 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
- ハサウェイ・ノアの回想でシャアの反乱当時が語られている。アクシズ・ショックに関しては触れずに、シャアの反乱において、クェス・パラヤの死と、宇宙の戦場で死んでいった多くの人びとの魂の声をきいたと回想をしている。
- 劇場版では同様のシーンでアクシズ・ショックを起こしたνガンダムが回想されている。
- 機動戦士ガンダムF90
- 「過去に本現象を目撃した人物」としては初のキャラクター、ボッシュが登場する。ただ、以降の作品における目撃者達とは異なり、彼は本現象を「悪魔の力」と解釈し、ガンダムに対する思想も歪んだものへと変貌していった。なお、ガンダムF90のOSにはアムロとシャアを模した疑似人格が採用されている。
- 機動戦士ガンダムF90FF
- 第26話にてボッシュがアクシズ・ショックを目撃した件が掘り下げられ、当時の状況が語られた。また、この際にジョブ・ジョンや『機動戦士ガンダム シルエットフォーミュラ91』のカール・シュビッツもその場に居合わせた設定が追加されている。
関連人物
当事者たち
- アムロ・レイ
- アクシズ・ショックの際にその中心に居た、文字通りの中心人物。アクシズの軌道が変更した後も帰還せず、消息不明となった。
- シャア・アズナブル
- アムロと同じくアクシズ・ショックの中心におり、やはり消息不明とされた。
- ブライト・ノア
- ロンド・ベル司令。アクシズ・ショックを最前線で目撃し、その後連邦軍高官らの査問会でこの現象のニュータイプの関与を否定するよう迫られ、結果アムロらの幻影に背中を押される形でそれに応じた。
- ハサウェイ・ノア
- ブライト・ノアの息子。アクシズ・ショックを戦場でモビルスーツに搭乗したまま間近で目撃し、生き残った数少ない名有り人間の1人であり、地球から離れるアクシズを呆然として見送った。
- ユウ・カジマ
- 連邦軍大佐。アクシズを押し返そうとするνガンダムの応援としてジェガンで馳せ参じ、アクシズ・ショックの場に居合わせた[3]。
- イアゴ・ハーカナ
- 後のシェザール隊隊長。『NT』においてはアクシズ・ショックを目撃した兵士の一人として描かれている。
- ボッシュ・ウェラー
- 後の第13実験戦団 (第13独立機動艦隊)大尉。カラバ時代からアムロの部下。落下するアクシズをνガンダムと共に支えた一人。その際にアクシズ・ショックを目撃し、その中心に居たガンダムの力に惹かれていった事から野心を抱くようになる。
- カール・シュビッツ
- 後のアナハイム社シルエットフォーミュラプロジェクトテストパイロット。ギラ・ドーガでνガンダムに協力したネオ・ジオン兵の一人。
- 連邦兵 / ネオ・ジオン兵
- アクシズの押し返しを試みた数多の名も無き兵士達。
その他関係者・目撃者
- アーロン・テルジェフ
- アナハイム社の社員でユニコーンガンダムの開発者の1人。『UC』本編で最初に「アクシズ・ショック」の用語を用いた人物であり、同現象についての説明も行った。
- ハウゼリー・ロナ
- 幼少期、シャトルでの移動中に同現象を目撃。
リンク
余談
- 『逆襲のシャア』作中ではアクシズを「押し返す」という表現をしており、νガンダムやジェガンも地球を世にアクシズへと取り付いているが、実際には地球へ落下しようとするアクシズを「加速させる」事で地球の引力圏から離脱させるのが正しい。
- 同様に地球に落下する物体を押し返すエピソードが描かれた『機動戦士ガンダム00』でも「加速させる」という表現が使われており、後に『ベルトーチカ・チルドレン』の漫画版でも同様の表現がされている。
脚注
- ↑ νガンダム単体のサイコフレームにそれほどの受信能力があったかは疑わしいが、他にこの現象を説明できる論は無いとしている。異説として、戦闘宙域に散布されたミノフスキー粒子がνガンダムのサイコフレームを触媒としてミノフスキークラフトと同じ効果を発揮した、という物がある(『逆襲のシャア』フィルムコミックなど)。
- ↑ 宗教戦争は人の起こす戦争の中でもっとも調停が難しく、長く過酷な殺し合いである。
- ↑ 原作ゲームはマルチエンディングであった為、決まった歴史を持っていないが、小説版から大佐になったユウ・カジマがジェガンに乗っているという設定が確立し、以降Gジェネレーションシリーズや漫画『GUNDAM LEGACY』など多くの媒体で「ジェガンでアクシズを押し返す」描写が採用されている。