クェス・パラヤ(Quess Paraya)

地球連邦政府の参謀次官アデナウアー・パラヤの娘。
実母は離婚して家を出て行き、父の愛人・キャサリンとは険悪な仲という家庭環境で育ったためか、反抗心の強い我侭なお嬢様として育っていた。
ニュータイプへの関心が深く、インドでニュータイプ主義者の僧のもとで学び、自身もニュータイプとして高い資質を持っている。
父親によって強制的に宇宙へと連れていかれた際にハサウェイ・ノアと知り合い、友人関係となっていくのだが、ニュータイプへの関心が強いクェスは初めての宇宙に惹かれ、かつてニュータイプとして名を馳せたアムロ・レイシャア・アズナブルと関わった事でクェスの運命は変わってしまう。
シャアの優しさに触れたクェスは「父親」を求めて彼のみを拠り所として慕う。
そして、シャアの思想に染まってしまったクェスは、彼に言われるがまま戦場へと駆りだされ、自覚無しに父親を手にかけてしまい、その後もα・アジールで戦場を暴れる事になるが、最期は自らを説得する為に戦場に飛び込んできたハサウェイを庇うような形で死亡てしまう事になった。

客観的に見て、家庭環境の悪さがクェスの人格を狂わせ、利用されるがまま誰からも大事な存在と思われず、孤独に散った人生は自らの破滅という最悪な結果を生んでしまった。
小説版ではアムロに寄り添うベルトーチカ・イルマに、劇場版ではチェーン・アギに嫉妬し、またシャアに寄り添うナナイ・ミゲルに敵意をむき出しにしていた。
なお、一見性格に問題の見えないチェーンがクェスから毛嫌いされてしまった事について理解できないと思う視聴者も多いが、実はクェス本人にとってはチェーンを激しく嫌悪する確かな理由があった。チェーンは好意を寄せているアムロに対してはしおらしく振る舞って彼に追従したり献身的に接する反面、本人が側にいない所では容赦の無い物言いをしてしまう等、人によって態度が大きく変化してしまう部分があり、劇中冒頭におけるνガンダムの組み立て作業時においてもその姿が描かれていた。この「調子が良い」とも言える部分は、クェスから父親を奪った愛人のキャサリンと似通っており(キャサリンはクェスに苛烈な態度を見せるのに対し、彼女の父・アデナウアーに対しては甘える態度に出ている)、クェスはチェーンからキャサリンと似た空気を感じた結果、激しく毛嫌いする事になったのだと思われる。

上映直後はそのエキセントリックな言動や、13歳という若さを顧みても非常に我儘な性格に、多くの反感があった。
しかし、両親の愛情が薄い家族環境、高いニュータイプ能力、自分勝手で自己を顧みない性格等は、実はTV版初期のアムロの姿とオーバーラップする。
アムロは多くの出会いと別離を経て本当の意味でのニュータイプとして変革したのに対し、クェスは悉く正反対の選択をし続けていった。
アムロを人類の変革すべき姿のひとつとして描かれているのなら、クェスは反面教師の姿として描かれていると言える。
つまるところ、優れたニュータイプ能力を持っていたとしても、結局は本人次第ということであろう。
作中の彼女の言動を見て共感できる人は多くはないと思われるが、このような描写からも他者と共感はできても他者からは共感はされない、という彼女の孤独が描かれている。

一方、劇中では友人となっていたハサウェイが、最もクェスと真剣に向き合おうとする様子が描かれている。
当初こそ一目惚れに過ぎなかったのかもしれないが、シャトルで怯えていた父親への態度等から彼女の中の鬱屈や孤独に気付いたのか、ハサウェイはクェスから何度拒絶されても彼女を見捨てようとはせず、遂には彼女を助けたいが為にプチモビでラー・カイラムに密航したり、ジェガンに乗り込んで危険な戦場に身を投じる程の行動力まで見せていた。しかし、戦場で再会した彼女からは拒絶され、そこに居合わせたチェーンからも離れるよう言われるが、それでもハサウェイは考えを変えようとはせず、チェーンのリ・ガズィの攻撃からクェスを庇う行動にまで出る。自らに攻撃が直撃する事に気付いたクェスは、この時になってようやくクェスはハサウェイを想った行動に出たのだが、その先に待っていたのは自分自身の死であった。この結末について、月刊ニュータイプに掲載された富野由悠季氏のインタビューでは「クェスのように最後の3秒間だけ人の気持を考えても遅いんです」というコメントが掲載されている。
後に、クェスの魂はハサウェイの夢に意識体となって姿をあらわすが、これもアムロ・レイとララァ・スンの関係に酷似している。
また、一方では、ネオ・ジオンのギュネイ・ガスからも好意を抱かれていたが、彼はニュータイプとしてのクェスにしか惹かれておらず、彼女個人の内面については見ようとしなかった。加えて、クェスの憧れの存在であったシャアへの侮蔑や悪い噂をするばかりか、自分が優秀である事をアピールをする等、口説き方としては最悪なやり方だった為、クェスはギュネイに対して煩わしいという感情しか持たなかった。

ちなみにOVA版機動戦士ガンダムUCの終盤でシャアらしき意識体の傍らにその姿はない。
機動戦士ガンダムUCは逆襲のシャアのオマージュ的描写を多く取り入れているが、意図的にそうしたのであれば、シャアにとってクェスは「その程度」の存在でしかなかったことの裏付けともなっている。付き合いが短すぎたのも理由の一つと言えるが…。

登場作品と役柄

機動戦士ガンダム 逆襲のシャア
GUNDAM EVOLVE
機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
青年へと成長したハサウェイの夢の中で登場。しかし、死亡してもシャアの所へ行ったらしい。

人間関係

アデナウアー・パラヤ
父親。
ハサウェイ・ノア
おそらくクェスを本当の意味で必要としてくれていた存在。彼がまだ子供だった故か拒絶してしまうが、最後は彼を庇うようにして命を落とす事になった。
「閃光のハサウェイ」では彼の夢の中に現れ、彼女がシャアの所に行った事に対して怒りをぶつけられる。
シャア・アズナブル
彼に好意を寄せるが、結局は利用されただけだった。父親やアムロにはない「大人の男としての頼りがい」を見ていたようだ。
ギュネイ・ガス
ナナイ・ミゲル
レズン・シュナイダー
アムロ・レイ
一方的に憧れの感情を持ち、そして勝手に失望していた。これはアムロが物語最終盤で「俺はクェスの父親じゃない!」と言っていたように、実父のアデナウアー・パラヤに失望していたクェスがアムロに父性を求めていたことを示している。
だがアムロが否定するように、父親として振舞ってくれないアムロに背を向け、シャアの下へと走ってしまった。
なお、アムロは父親のテム・レイの酸素欠乏症の原因をそうと知らず生み出しており、クェスもそうと知らず父親のアデナウアーを殺害している。このことからもニュータイプへと革新したアムロと同じ条件を持ちながらも全くの正反対の選択をし続けていた裏付けとも言われている。
チェーン・アギ
彼女によって撃墜される。
アストナージ・メドッソ

名台詞

逆襲のシャア

「先に行っててよ!……何も判ってないんだから!」
アデナウアー・パラヤは父親としての立場から単に心配を口にしているだけなのだが、「軍事機密だから人に言っちゃいかんぞ」「邪魔になるからこっちにきなさい」という自分の体裁ばかりを優先していると彼女は解釈してしまう。彼女は「すごいね」という素直な感想に同意(または共感)してほしかった、あるいは褒めて欲しかっただけである。このことからも、彼女が愛情に飢えており、自分を受け入れてくれる人を探していたことがわかる。
「あれがアムロ・レイか……『こっちで~す!』、だって」
宇宙に上がって初めてアムロ(とチェーン)に会った時の台詞。
「アムロ、あんた、ちょっとセコイよっ!」
クェスがシャアの側についた時の台詞。
「ああ…!なんか、あたしの中に人がいっぱい入ってくる…。こ、怖い…気持ちが悪い…」
感受性が強い為戦場での様々な波を受けてしまった時の台詞。
「大佐!あたし、ララァの身代わりなんですか!?」
周囲に人があり、しかも作戦中に地雷中の地雷を平然と。
彼女の才能だけを欲しているシャアにとって、こうしたプライベートな部分に踏み込まれるのは非常に疎ましかったのだろう。
その後笑顔で抱きつくクェスと対照的に、シャアの険しい表情からも伺える。
「子供は嫌いだ!図々しいから!!」
クェスの未熟さを如実に物語る一言。彼女のこれまでの言動が慎ましやかであると感じる人は少ないだろう。
図々しいから嫌いだ、という自分自身が図々しいことに気づいていない「子供」なのだ。

閃光のハサウェイ

「あんたは、あたしと一諸に行くんじゃなかったの……」
「ハハハハ…ひがんでる!」
青年へと成長したハサウェイの夢の中で彼女が言い放った台詞。

その他の媒体

「ハサウェイ、ゴメン…。今は会えない…」
『SUNRISE WORLD WAR Fromサンライズ英雄譚』にて。

搭乗機体・関連機体

クェス専用ヤクト・ドーガ
α・アジール
ジェガン
ラー・カイラム乗艦時に乗り込み、戦闘シミュレーションを体験させてもらっている。
ホビー・ハイザック
ギュネイと共に搭乗。

商品情報

話題まとめ

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