南洋同盟
南洋同盟
機動戦士ガンダム サンダーボルトに登場する地球連邦を構成する組織の一つ。「南洋宗」という仏教系の宗教を信仰する信徒・僧侶からなる自治権を持った宗教国家で、東南アジアを中心にインド洋一帯から東アジアにかけてを勢力下に収める。指導者はレヴァン・フウ僧正で、一年戦争後は南洋宗の信仰者だけでなく難民や孤児、連邦・ジオン両軍の傷痍軍人などを受け入れている。シンボルマークは角が上に来る正方形の四隅に小さい正方形をつけたもので、信徒は体のどこかにその刺青を持つ。行政・軍事は僧侶と尼僧が担っているようだが
南洋宗は仏教系の組織であるため、僧侶は袈裟を着用し、お経を読むなど現在の仏教と共通した価値観・習慣を持っている。また僧侶はチャウ・ミンのような年少者であっても全員剃髪しているが、尼僧は特に髪を剃っていない。 僧兵らによる軍事組織があり、タール火山基地などの大規模な施設や多数のモビルスーツも保有しているものの、あくまで軍隊ではなく、僧兵たちの階級は軍隊式ではなく「僧都」「律師」などの僧階で呼ばれる。MSのコクピットにはお経を流しており、強い信仰心を持って戦うため死を恐れず常に高い士気を誇るが、装備や兵員の練度は必ずしも高いとは言えない。
一年戦争時は連邦の一員として参加し、南洋宗の僧侶たちが掃海艇に乗ってデブリの回収と犠牲者の供養を行っていた。この際に得たMSなどの資材と技術、J・J・セクストンら技術者とリユース・サイコ・デバイスを含めたサイコ・ザクのデータなどの技術を入手したことにより、「仏国土の実現」という大義を掲げ疲弊した連邦からの独立を目指している。 しかしその真の目的は「量産したサイコ・ザクを戦力としてソーラ・レイを奪取し、死の商人『アナハイム・エレクトロニクス社』の撃滅によって真の平和を達成する」というものであり、傷痍軍人の受け入れはサイコ・ザクのパイロット候補を探す目的もあった。
登場作品
- 機動戦士ガンダム サンダーボルト
- 第二部にて登場。一年戦争中にリユース・サイコ・デバイスとサイコ・ザクのデータを偶然手に入れてしまったことから、それを巡る連邦とジオン残党の戦いが起こり、また南洋同盟自身もレヴァン・フウのもと連邦軍のペガサス級戦艦スパルタンからの攻撃を受けながらもサイコ・ザクに関する計画を進める。
主な構成員
僧侶・僧兵
- レヴァン・フウ
- 南洋同盟の指導者。一年戦争以前にモニカ・ハンフリーらの実験によって生み出された人工ニュータイプで、余命1年を宣告されながらもとある技術によって生き永らえている。信徒の一部にテレパシーで指示を与えることができ、そのニュータイプ能力とカリスマ性によって強い団結を生み出している。
- ハリク・ワッダイ
- リグの総代を務める住職。レヴァン・フウからの指示を受けてタール火山基地の位置を自白し、ダリルとイオを引き合わせるよう誘導する。
- グェン・サップ・ハニガ
- タール基地の総代である小柄な老人。スパルタンによる侵攻作戦の際は防御の指揮をドニー・ラウに任せ、自身は脱出せず高齢の僧らとともに最期まで経を読み祈りを捧げ続けた。
- ドニー・ラウ
- タール基地の僧兵頭を務める大柄な僧侶で、僧階は僧都。大らかな性格で、基地に到着したダリル達とも気さくに接していた。元ジオン兵で、アフリカ戦線で戦車長をつとめた経験からクローディアやレヴァン・フウの同乗するザクタンクのパイロットを務めることもある。スパルタンとの戦闘ではクローディアと指揮管制室に詰めていたが、突入してきた連邦兵からクローディアとともに脱出、ザクタンクでダリルを援護するもののアトラスガンダムに撃破され戦死した。
- クローディア・ペール
- 元地球連邦軍「ムーア同胞団」所属で、空母ビーハイヴ艦長。リビング・デッド師団との戦闘でMIAとなった後南洋同盟に保護され、国境守備隊隊長となる。彼女によって南洋同盟の戦術は劇的に改善したとされる。周囲からは「中佐」や「比丘尼」と呼ばれるほか、モニカからはレヴァン・フウの懐刀と目される。
- キム・ラウ
- リグでビビたちサイコ・ザクパイロットとして選ばれた者たちを迎えに来た南洋宗の僧侶。追撃部隊との戦闘に突入した際には音楽代わりにお経を掛けようとするなど、ズレたところもある。タール火山基地での戦闘前に先行して宇宙に上がり、打ち上げられてきたサイコ・ザク回収の指揮を執る。
- チャウ・ミン
- 南洋同盟のMSパイロットである少年で、僧階は律師。グフ (サンダーボルト版)に搭乗し、同機で構成されるモビルスーツ隊の隊長格。元戦災孤児で、クローディアを「比丘尼様」と呼び慕っている。スパルタンへの襲撃やタール火山基地の防衛戦を生き抜くなど、年少ながら確かな腕を持つ。
スパイ・シンパ
- フィリップ・カウフマン
- ジオン公国軍残党で、マッド・アングラー級を母艦とするシーホース部隊の隊長を務める少佐。ゴッグ (サンダーボルト版)を駆るMSパイロットでもある。戦時中に妻と生後間もない子を連邦軍の空襲で失ったことから強い憎悪を持っており、アルコール依存症にも陥っている。実は部隊全員が南洋同盟に帰順しており、クローディアの身柄を確保した際に彼女やダリル達とともにジオン残党軍を裏切り、海底基地ドロスを爆破する。攻撃が始まる前にタール火山基地から重要人物を脱出させたあと基地に引き返し、生き残った整備兵たちとビリーを回収する。
- コーネリアス・カカ
- スパルタンに乗艦するメカニック。一年戦争中にドライドフィッシュを制圧する際に起きた出来事がトラウマとなっており、スパルタンに乗艦した際には既に南洋宗の信徒となっていた。とある目的でイオ・フレミングとダリル・ローレンツを引き合わせるために行動していたが、タール火山基地での戦闘終了後にスパイであることが発覚してしまう。
物語途中から参加
- ダリル・ローレンツ
- レヴァン・フウと交信し、クローディアを拉致して会話を交わしたことで南洋同盟に帰順。
- セバスチャン・モース、ビリー・ヒッカム
- ダリル小隊のMSパイロット。レヴァン・フウの力を体験したことが機で南洋同盟に帰依した。
- ビビ・ベンソン
- 元ジオン軍人で、ブローバー潜水艇乗り。傷痍軍人であり四肢が全て義手義足。凄腕のハッカーだが両脚が不自由な息子アレックスを持つシングルマザーで、生活費のためにリグで娼婦をしていた。客としてフィッシャーと出会った後にスパルタンがリグを攻撃し、レヴァン・フウにサイコ・ザクのパイロットの1人として選ばれたため南洋同盟に加わる。
- 宇宙に上がってからはMS隊「ベンソン・ファミリー」の隊長となり、ガルバルディα (サンダーボルト版)に乗ってサイコ・ザクを回収作業の護衛任務に就く。この時には律師の僧階を与えられている。
- フィッシャー・ネス
- なりゆきでビビたちと一緒にブローバーに搭乗したが、その後はビビとアレックスとともに生きていくことを決意して離反。偶然にもダリル達も離反したため、彼らを裏切る決意は無駄になってしまった。
- ハンク、ボリス、マシュー、エイプリル
- 水上都市リグにてレヴァン・フウ僧正の呼びかけに応えたサイコ・ザクパイロット候補。宇宙に上がってからは「ベンソン・ファミリー」の一員としてノーマルシステムのザクIIやザクIに搭乗している。もともとのパイロット経験は不明だが、四肢を義手と義足に代えたばかりにも関わらず数に勝る連邦のパトロール艦隊を全滅させる戦果を挙げている。
その他
- J・J・セクストン
- 一年戦争時、ドライドフィッシュから脱出・漂流した際に南洋同盟に保護された。RPDのデータを南洋同盟に渡したことは作中ではかなり重大な出来事だが、生き延びて研究を続けたいだけの本人に自覚があるのかは不明。
保有戦力
部隊
- シーホース部隊
- フィリップ・カウフマン率いるマッド・アンクラー級を母艦とする部隊。残党軍に参加していると見せかけていたが、実際には部隊全員がシンパだった。
- マーメイド部隊
- リグに駐留する女性水陸両用モビルスーツ部隊。アトラスガンダムとの交戦で全滅。
- ベンソン・ファミリー
- サイコ・ザクのパイロット候補生部隊によって結成されたMS部隊。完熟訓練も兼ねて、サイコ・ザクの搬送作業を護衛する。
関連拠点・施設
- リグ
- 水上都市。複数の石油プラットフォームを集積して再利用したもので、闇市や歓楽街もあるものの治安は良いらしい。難民と一緒に流入するサイコ・ザクのパイロット候補生となる傷痍軍人を探す場としての側面もあったが、スパルタンによって制圧された。
- タール火山基地
- フィリピンのタール湖にある火山の内部に秘匿された基地。火山の熱による発電機能と衛星からの探知の妨害機能を持つほか、厚い地盤のなかに複雑に入り組んだ施設を持つため攻略は非常に困難。内部にはサイコ・ザクの研究開発拠点も備える。