キマイラ隊(Chimera Corps)
一年戦争末期にジオン公国軍突撃機動軍に創設されたキシリア・ザビ直轄の特別編成大隊。制式名称は「突撃機動軍特別編成大隊」。編成責任者は突撃機動軍情報統括長ヒュー・マルキン・ケルビン。
各地から選別されたトップエース[1]のみを集めて編成され、当時最新鋭機だったゲルググ系MSが優先的に配備された事から、「エース部隊」とも呼ばれている。発足当初は大隊に規定出来るだけの規模には達しておらず、オデッサ作戦後の二次招集を経て最終的に大隊定数を超えるだけの規模になった[2]。なお、エースパイロット部隊の構想は一年戦争初期から存在し、キマイラ隊へ編入させるエースパイロットを選抜する目的でマルコシアス隊が編成されていた。
しかし、エースパイロットを選りすぐったという編成コンセプトは軍事的にも不可解であり、結成後殆どはコレトビール暗礁宙域での実働テストに終始し、実戦への参加も終戦間際のア・バオア・クー戦以外で重要な局面に投入された記録も無く、戦後は部隊ごと消息不明になっている事から、「一年戦争で最も有名でありながら、最も謎の多い部隊」として戦後は様々な憶測と共に語られている。
その実態は、シャア・アズナブル率いるニュータイプ部隊の造反に対応する為の「カウンター・ニュータイプ部隊」であった。オールドタイプパイロットがニュータイプに対抗する為の戦術や装備の開発・実証を行う実験部隊としての側面を持ち、同時に「ザビ家の復習装置」を秘匿・守護するという任務も帯びていた。
部隊は大きく分けてエースパイロットを中心とした中核モビルスーツ部隊、母艦や支援艦を中心とした艦隊、MS部隊の予備戦力としての役割も持つ艦隊直衛MS隊、そして専属技術部隊「ヒュドラ」の4隊によって構成されており、特に「ヒュドラ」のスタッフはジオニック、ツィマッド、MIPのトップエンジニアやメカニックが出向しており、ヒュドラの中核となる大型プラント艦「ミナレット」と、そこに搭載された設計支援システムによって、各パイロットの要望に応えた機体のカスタマイズを僅か数日で完成させる事が出来た。
キマイラ隊は24機の先行量産型ゲルググを受領し、ヒュドラによってパイロットに合わせた機体にカスタマイズされている。ゲルググ以外にも少数ではあるが高機動型ザクII (R-1A型)も配備されていた。
登場作品
- MSV
- 初出作品。ジョニー・ライデン、ジェラルド・サカイ、トーマス・クルツの所属部隊として設定されていたが、この時点では「キマイラ」は母艦となるザンジバル級の名称であり、書籍等では「エース部隊」と記述されていた。「キマイラ隊」の名称は後続作品で定着した名称となっている。
- MSV-R
- 新たにユーマ・ライトニングやジャコビアス・ノードといった所属パイロットや、ゲルググ高機動型 R型などが設定された。また、MSVでは文章設定のみであったキマイラもザンジバル改級に改められ、デザインが起こされている。
- 機動戦士ガンダム MSV-R ジョニー・ライデンの帰還
- 物語のキーパーソンとして一年戦争を生き残った隊員たちが登場。ミナレットやカウンター・ニュータイプ部隊としての設定も本作で追加された。
構成員
非戦闘員
- ヒュー・マルキン・ケルビン
- 編成責任者。「オールドタイプによるニュータイプ殲滅部隊の研究と開発。そしてその運用」の構想をキシリア・ザビに上申し、キマイラを設立した。ミナレットの全容を知る三人のうちの一人。
- エイシア・フェロー
- キマイラ船医長。ヒュー、ジョニーに並ぶ部隊内での重要人物の一人。やはり彼女もミナレットの全容を知っていた。
- アナスタシエフ
- ザンジバル改級「キマイラ」艦長。
- スコット・アンデルセン
- 主計官。戦後は連邦に渡りFSSに所属。
中核MS部隊
- ジョニー・ライデン
- 第一MS中隊隊長。機体番号010。「真紅の稲妻」の通称で呼ばれたエースパイロット。一年戦争末期に行方不明になるが、戦後も彼を慕う元隊員は多い。
- ジャコビアス・ノード
- 第一MS小隊No2。機体番号021。ジョニーの片腕的存在。戦後は民間軍事会社テミスの社長に就任。オクスナー・クリフの「猟犬」として活動した。
- ユーマ・ライトニング
- MS第二小隊所属。機体番号099。ジオンで研究されていた強化パイロット試験体。一年戦争後は連邦軍籍を手に入れ、連邦軍を装いつつキマイラ残存部隊や他のジオン残党のリーダーとして活動していた。
- ジーメンス・ウィルヘッド
- 第二小隊隊長。機体番号017。キマイラ創設当時からの古参パイロット。戦後はエメと結婚し、ユーマからの連絡を待つ間パン屋を営んでいた。
- エメ・ディプロム
- 第二小隊No2。機体番号022。キマイラMS部隊の紅一点。戦後にジーメンスと結婚。
- クリストバル・ラザフォード
- 第二小隊所属。機体番号023。元アフリカ戦線「カラカル隊」所属。ロイ・グリンウッドの元部下にあたる。
- アウトロー・チェスター
- 所属部隊は不明。機体番号不明。一年戦争後、キシリア派の一党を束ね火星でジオンマーズを結成。後のオールズモビル戦役の布石を作る。
- イングリッド0
- 所属部隊不明。機体番号011。クローン技術で生み出された強化人間。終戦間際にジョニーによって冷凍睡眠処置を施され、その後ゴップの養女として引き取られた。
- マイヤー・メイ
- 所属部隊不明。機体番号018。主にチャクラム型のビーム兵装を使用する。ガーニムとコンビを組む。
- ガーニム・ムフタール
- 所属部隊不明。機体番号019。対艦戦闘のエキスパート。マイヤーからの信頼も厚い。
- ジェラルド・サカイ
- 元グラナダ技術士官。一年戦争後、生存が公になっている唯一の隊員。
- デビット・チェイスマン
- 所属部隊不明。機体番号001。階級は少佐。
- トーマス・クルツ
- 元ゲリラ部隊「G-27」所属。機体番号058。元は連邦軍人だったが家族がサイド3出身だった為に開戦に伴いジオンに亡命した経歴の持ち主。ア・バオア・クー戦で戦死。
- マッキ・ヴィスコンティ
- 機体番号041。キシリアの密命によりハインケル、トーマスと共に反逆者として追われる身となったシン・マツナガを拘束する任務に就いた。
- ハインケル・バッツ
- 機体番号047。オッゴをバックパックに背負ったゲルググ高機動型 R型に搭乗。マッキ、トーマスらと共にマツナガ拿捕の任務に就いた。
- パイロット不明
- 機体番号027。機体は高機動型ゲルググ。コレヒドールの戦いへの参加が確認されている。「1/144 ゲルググキャノン」のパッケージに描かれている。
- パイロット不明
- 機体番号053。機体はゲルググキャノン。コレヒドールの戦いへの参加が確認されている。「1/144 ゲルググキャノン」のパッケージに描かれている。
- パイロット不明
- 機体番号057。機体はゲルググキャノン。クラリオン作戦への参加が確認されている。「1/60 ゲルググキャノン」のパッケージに描かれている。
- パイロット不明
- 機体番号不明。機体はゲルググキャノン。ア・バオア・クー攻防戦への参加が確認されている。恐らくユーグのジム・コマンド宇宙戦仕様に撃破された機体と思われる。
艦隊直衛MS隊
- ブロイ・リゲラ
- 艦隊直衛MS隊所属。戦後は連邦軍に入り込み、ジョニー・ライデンについて探る者に接触する工作員として活動。