スペースコロニー(Space Colony)編集
人類が宇宙空間で生活するために作り上げた大規模な「人工の大地の植民地」。技術的には宇宙ステーションの延長に存在する物。数百から数千人の人類が自給自足できるように作られている。その大きさのため、月と地球の重力均衡点「ラグランジュポイント」で疑似的な衛星として周回するように設置されることが多い。
ガンダムシリーズにおいてはほとんどの作品で登場する。
各世界観におけるスペースコロニー 編集
宇宙世紀・リギルドセンチュリー編集
人口増加や環境汚染などの問題を解決する手段として宇宙移民が開始され、それを受け入れるためのものとして建造が始まる。ルナツー、ア・バオア・クー、ソロモン等も、当初はコロニー建築の為にアステロイドベルトから運搬されてきた小惑星群である。
建造はコロニー公社によって行われ、コロニーに住む人間は地球に住む者からスペースノイドと呼ばれている。
全長35km、直径6.4kmの円筒形をしており、1基で100億トンもの重量を持つ。「島3号」型と呼ばれるシリンダー型コロニーが主流で、内部面積に余裕のある密閉型と、ミラーによって太陽光をコロニー内に取り入れる開放型の二種類に大別される[1]。
各ラグランジュポイントに配置されているコロニー群は各々サイド1~サイド8と呼ばれており、「サイド」はそこに群立するコロニー群を指す。各サイドは「ルウム」「ムンゾ」「ノア」など呼称を持ち、その中での各コロニーは建造順に「バンチ」で番号を付けられる(個別に名をつけられるものもある)。一年戦争の前後でサイドの番号と位置が異なる資料があるが、これは戦後のコロニー再生計画によって新たに番号が振り分けられた為である。
地球連邦が崩壊して各サイドが独立国家となった後の宇宙世紀では、『コロニー』という呼称は差別用語として公の場で使用する事が禁止され、代わりに『セツルメント』と呼ばれるようになる。しかし、後のR.C.の時代では再び『コロニー』と呼ばれている。
基本は宇宙移民者の為の生活空間ではあるが、中には観光や軍事などの方面に特化したコロニーも存在する。
未来世紀編集
宇宙世紀とは違い、地球の主権はコロニーが握っている。これは地球の環境汚染の進行によって各国家群が地上を離れ、国家の中枢をコロニーに移している事に由来する。各コロニー国家は地球の管理権を争い、四年に一度ガンダムファイトを行っている。
重力制御システムによって遠心重力の制約から開放されている為、形状は各コロニーで大きく異なり、それぞれの国の(ステレオ)イメージが反映された物になっている[2]。
アフターコロニー編集
「スタンフォード・トーラス」と呼ばれるドーナツ状のコロニーが主流。宇宙開発に伴い既存の暦からアフターコロニーへ改暦されたが、最初のコロニーが建造されるまでに100年近い年月を要している。これは未知の疾病やコロニー関連計画の失敗、紛争による遅れであると言われている。
L1~5でコロニーが建造されているが、長らく地球圏統一連合による軍事的圧力が加えられており、地球への反抗を企図する者も多い。また、連合の設置した宇宙機雷による航路封鎖によって各コロニー間の移動に制限があった。
トーラス型の他、MO-Ⅴなど小惑星を利用した工業コロニーも存在する。
アフターウォー編集
基本的には宇宙世紀のスペースコロニーの諸設定に準じる内容となっている。
第7次宇宙戦争以前は数多くのスペースコロニー及びコロニー国家が存在していたが、後にザイデル・ラッソ率いる宇宙革命軍が発足した事で、人類史上最悪とも言える戦争に巻き込まれてしまう。
月の裏側にある「クラウド9」を中心に発足[3]した宇宙革命軍は、自分達に従わないコロニー国家の住民を悉く虐殺か強制退去させ[4]、第7次宇宙戦争終盤でそれら無人化したコロニーをコロニー落としに利用した。
正暦編集
作品上、地球と月しか出てこないので、地球と月の中間点以外の場所は登場しない。
登場するものもザックトレーガーと呼ばれる自転を利用した大型射出装置、実験衛星ミスルトゥのみである。
コズミック・イラ編集
コーディネイターが中心となって建造した新世代のコロニー「プラント」が登場。プラントはそれまでのガンダム作品で描かれた気密型および開放型とはまったく違った「砂時計型」とでもいう形をしている。砂時計の底面が居住空間となり、中央部分が宇宙港として機能している。
この世界でのスペースコロニーは、ナチュラルとコーディネイターの住み分けとして機能しているが、中立国のオーブの「ヘリオポリス」など、ナチュラルとコーディネイターが共存しているケースもある。
場所はL5(地球から見て月の向かって右側のラグランジュポイント)にあり、これは中立コロニーのヘリオポリスも同様である。
西暦編集
開発は発展途上で本格的な宇宙移民は行われておらず、宇宙世紀シリーズに登場したムーン・ムーンのような島2号型コロニーが十数機ほど建設されたぐらいである。コロニーも居住地というよりは実験施設や生産工場的な扱いが強く、無重力空間や高重力環境で精製可能な材質の生産を行っている。
また、コロニーは人類共通の財産とされており、コロニー内の戦闘は厳禁となっている。
アドバンスドジェネレーション編集
シリンダー型のコロニーが登場する。大きさは全長約25キロ、直径約6キロで、回転速度は0.50rpmとされ、時刻の基準にはグリニッジ標準時が使用される。
土壌はナノマシンにより改良されており植物には遺伝子改良が施されているものの、居住可能な人数には限界があり人口密度は低く保たれている為、難民は歓迎されない傾向が強い。コロニーの住民は他のコロニーの出来事に無関心であることが多く、天使の落日でコロニー「エンジェル」がUEに破壊されても危機感を持つ住民はほとんどいなかった。
また、「ファーデーン」のように表向きは裕福なコロニーでも実際は貧富の差の激しいコロニーや、「ミンスリー」のように地球の環境を再現しているコロニーも存在する。
本編より100年以上も前にはコロニー数の増加が切っ掛けとなり、コロニー間で地球の覇権を賭けた戦争「コロニー国家間戦争」があったとされる。
火星の衛星軌道上にヴェイガンの本拠地となるコロニー「セカンドムーン」が存在する。そちらは割れた卵の殻のような構造物が中心部を囲んでおり、内部は石造りの中東のような町並みが広がっている。また、セカンドムーンは単独で火星圏から地球圏まで移動する事も可能である。
ポストディザスター 編集
地球圏周辺にドルトコロニー、アバランチコロニー等のコロニー群が点在し、各経済圏の統治下にある。ドルトコロニー群は移民ではなく地球向けの工業を主目的としており、コロニー自体も経済圏傘下の企業の所有物となっている。労働環境の問題から現地労働者と経済圏との間で軋轢が生まれており、貧富の差も激しく労働者居住区にはスラムも存在している。
コロニーの形状はシリンダー型が主流だが、金星では「フローティング・コロニー」と呼ばれる独自の構造のコロニーが使用されている。また、コロニーの中には厄祭戦で破壊され300年以上放置された廃棄コロニーも存在する。
アド・ステラ 編集
アド・ステラのコロニーは「フロント」と呼ばれ、小惑星を基部に建造されている。アスティカシア高等専門学園は、フロントそのものを巨大な教育施設として用いている。
内部の広い範囲には人工重力がかけられており、力の大きさは地球と同じ1Gで、各フロントに住まう者は宇宙生まれが大半でありながら無重力や弱重力による筋萎縮や骨量減少に苦しむ事なく、一生涯にわたって宇宙で生活が可能になった。内部に植生している植物も防虫・防腐対策のための遺伝子操作が施されている。
フロントの管理はAIによって行われ、インフラロボットとしてハロが導入されている。
関連用語編集
余談編集
- スペースコロニーの構想は架空のものではなく、1969年にアメリカのプリンストン大学教授であったジェラルド・オニール等が提唱したのが始まりである。
- 1974年にニューヨーク・タイムズで紹介された事で注目され、日本では1979年に放映が開始された「機動戦士ガンダム」の舞台装置となったことで広く知られるようになる。
- 現在では、費用対効果の面などから人口増加対策としては疑問符が付けられてしまっており、軌道エレベーターやテラフォーミングによる惑星移民の構想が主流となっている。
- 先述の軌道エレベーター構想などの浸透度や元々超光速航法やコールドスリープによる長期間航行能力を有する航宙艦が一般的なテクノロジー水準であり他惑星へのテラフォーミングの方が効率的な事が多い海外のSF作品でスペースコロニーを主題としているものはマイナーなものに留まるなど、日本のSF作品とは真逆の状況となっている。