フェイズシフト装甲(Phase Shift Armor)
「機動戦士ガンダムSEED」シリーズに登場する特殊装甲。略称「PS装甲」。直訳である「相転移装甲」と呼ばれる場合もある。
アドヴァンスト・スペースダイナミック社で研究されていた物で、大西洋連邦ヘブンアイランド技術研究所でマリュー・ラミアスを中心に開発が進められた事で実用化にこぎつけた。
一定の電圧を持つ電流を流す事で相転移反応を起こす特殊金属で構成された装甲であり、物理的な衝撃を無効化する他、理論上単機での大気圏突入も可能な高い耐熱効果を付与する。この為、質量や衝撃といった物理的なものに頼った武装[1]による装甲の破壊には無敵に近い防御力を発揮する。しかし装甲そのものを直接切り裂くタイプの武器や、質量兵器のように装甲の内部に衝撃を与えて破損させるタイプの攻撃は防げず[2]、質量弾に類する武器やビーム刃を防ぐこともできない[3]。一方、ビーム兵器の方は低出力の物であれば防御可能だが、ビームライフルのような高出力ビームの前には無力となる。
地球連合軍では当初シールドに用いられている対ビーム振動鋼材にPS装甲の機能を併用させる案も提出されていたが、この鋼材とPS機能は技術的に相性が悪く、また通常の合金よりも金属疲労が激しく耐久性が低かった為、不採用となった[4]。
外見上の特徴として、非展開状態は装甲が灰色がかっているが通電時に色が付く事が挙げられる。この非展開状態は「ディアクティブモード」と呼ばれ、展開時の「アクティブモード」から「ディアクティブモード」に移行する事を「フェイズシフトダウン」と呼ぶ。機体のカラーリングは装甲にかかる電圧によって変化し、ストライクルージュのように改修によって機体色が変化したケースも存在する。
PS装甲は製造コストが高く、更に相転移状態を維持するためには常に一定量以上の電力消費が避けられず、長時間の展開や被弾数の増加等により機体の稼働時間を短縮させてしまうという短所を持つ。ビーム兵器の使用によっても稼働時間が短縮するため、核動力源を使ったMS以外は一般の量産機に比べて作戦行動時間が相対的に短いことを意味する。また色の変化のせいでフェイズシフトダウン(=パワー切れ)が一目瞭然となってしまうリスクもある。
その量産に向かない性質のため、ザフト・連合双方ともに採用は一部の機体のみに限られ、それ以外の機体は対ビーム・シールドやラミネート装甲といった比較的安価な技術を用いる形に落ち着く事になった。
登場作品
- 機動戦士ガンダムSEED
- 初出作品。当初は地球連合軍の独占技術であり、ストライクガンダムを始めとする5機のG兵器に採用された。だが、その内の4機がザフト軍に奪取・解析された事でプラント側にも技術が流出。
PS装甲の弱点でもあるエネルギー消費の問題については、ザフトはニュートロンジャマーキャンセラー搭載による核動力の実用化で克服。一方、連合側はトランスフェイズ装甲を採用し、消費電力を抑える事で対処した。 - 機動戦士ガンダムSEED ASTRAYシリーズ
- オーブ連合首長国のモルゲンレーテ社が5機のGを開発した際に技術盗用を試みているが、この時はブラックボックス化されていたので失敗した。
後に戦闘で大破したストライクを回収・修復する際にこの技術を解析しており、これによってようやく実用化が可能となった。