エアーズ
エアーズ(Aires)
月の裏側に初めて設けられた観測基地から発展した自治都市。市の中央にそびえ立つ中央政庁ドームを中心に半径30km程の面積を有する。
住人の殆どがかつての観測基地隊員を祖としているために月面自治都市にしては珍しく地球回帰願望が根強く、さらに二度と地球を見る事ができないという立地・環境条件という2つの地球崇拝から生まれた地球至上主義に支えられた、月面都市の中でも特に異彩を放つ超保守的な都市となっている。
観測基地より発展した経緯からスペースコロニー建築の前進基地としても使用されており、市にはマス・ドライバーが設置されている。また、観測基地をベースに無秩序な建設を行った結果、市の大部分が地下に建設されている一方で、一部の公共エリアは月面の地表上に露出する形となっている。
宇宙世紀0084年4月30日に市近郊のバンガー工業で労使交渉が争議に発展した際、ジオン残党ゲリラが騒乱に乗じてモビルスーツを持ち出し武装蜂起したが、当時、訓練中だったティターンズの部隊がこれを瞬時に武力鎮圧し名声を得ている。
都市の防衛を名目として予備役兵で組織されたエアーズ市民軍を擁し、グリプス戦役の際は思想面からティターンズに協力。市民軍は後方兵力としてコロニーレーザーの警備の任に当っていたが、戦役はエゥーゴの辛勝に終わり、敗兵となったエアーズ市民艦隊はエアーズへ帰郷。艦隊には行く宛のなくなった他のティターンズ将兵も同乗しており、市長のカイザー・パインフィールドは彼らを市民として受け入れ、地球連邦政府のティターンズ将兵の引き渡し要求を内政干渉を理由に拒否し続けてきた。
グリプス戦役後、小惑星ペズンから撤退してきたニューディサイズが訪れ、彼らの「月面都市連合」構想に乗り協力体制を築いたものの、α任務部隊をはじめとする地球本星艦隊が宇宙世紀0088年3月17日に制圧作戦「イーグル・フォール」を実施。ニューディサイズが旧ティターンズ兵士と市民軍から成る防衛隊を率いて、包囲作戦を展開する討伐隊と激しい攻防戦を繰り広げたが、1週間に亘る戦闘で戦力を大幅に損耗。その間、フォン・ブラウンなど他の月面都市に向け月面都市連合構想のアピールを積極的に行う事で協力を要請したが、いずれも地球連邦政府に対する経済制裁勧告に留めるだけで一切協力をしなかったため、市長と同意の下、3日後にニューディサイズは脱出作戦を実行。作戦を展開している間に市は討伐隊により大半を制圧され、中央政庁ドームを残すのみとなったため、時遅く送られてきたネオ・ジオンのトワニング艦隊からの援助の申し出を断り、抵抗を止め連邦政府に恭順する事を決定。市長は責任を取って拳銃自決し、市は討伐隊に降伏した。
登場作品
- ガンダム・センチネル
- 初出作品。第五章~第十章の舞台となり、ニューディサイズの論理爆弾による降下阻止や、討伐艦隊が実施した制圧作戦「イーグル・フォール」による激しい攻防戦が繰り広げられた。
- GUNDAM LEGACY
- episode 13(単行本第3巻record 14)にてティターンズの名が知れ渡る切欠となった暴動鎮圧の様子が描写された。市でジオン残党勢力がザクIIで武装蜂起した際、当時訓練中であったジム・クゥエル部隊がこれを速やかに鎮圧し、ティターンズの名を上げた。なお、クゥエル部隊には当時ティターンズ所属だったフォルド・ロムフェローも隊員として所属していた。
- 機動戦士ガンダム MSV-R 宇宙世紀英雄伝説 虹霓のシン・マツナガ
関連人物
- カイザー・パインフィールド
- 市長。グリプス戦役で市民軍を率いてコロニーレーザー警備の陣頭指揮に立っていたが、戦闘が始まる直前に彼の身を案じる部下達によってエアーズへ連れ戻された経緯があり、敵前逃亡の雪辱をそそぐチャンスとしてニューディサイズを受け入れた。
- マルセラ・スペンサー
- 『虹霓のシン・マツナガ』に登場する元エアーズ市民軍所属の女性連邦兵。
施設
- 中央政庁ドーム
- 市の政治中枢。過去の基地施設を転用しており、宇宙港から地下の軌条にあるリニア・モーターのコンテナ式台車を使えば20秒程でモビルスーツごとドームに入る事が可能。入港管理局があるのもここである。
- 市長室
- 中央政庁ドームにある市長室。ドアは年代物の本物のマホガニーで作られており、部屋の中には月面の景観が映し出された大型モニター、本物のオーク材で作られた執務机がある。
- 行政部
- 市の行政部。臨時の防衛隊司令部となっており、モニターで市の全域を見る事が出来る。防衛戦時には大勢の市民の負傷者が避難している。
- 地下広場
- 中央政庁ドームの地下にあるスペース。かつて射出物集積所だった所を長らく重機材置場として使用していたが、現在では急造の防衛隊用MSハンガーとして改修されている。
- マス・ドライバー
- コロニー建設の際に月の鉱物資源を宇宙へ投げ上げる為の電磁カタパルト。長らく使用されず老朽化が進んでいるが、射出台部分は軌道爆撃に備えて一年戦争時に装甲を施す改修が行われている。政庁ドームからそう遠く無い場所から加速路が始まっており、月面の地下を東側へ約8キロの長さに渡って続き、地上に出る部分から4キロの太鼓橋のような構造体となっている。
- 資材を「パレット」と呼ばれる荷台に乗せ、秒速2,380m以上の脱出速度で太鼓橋の中央で射出。軌道を漂う資材は目標のラグランジュ・ポイントに待機している巨大なケブラー繊維製の袋を持ったマス・キャッチャーにより回収される。パレットについては太鼓橋を下ってから減速を開始し、射出軌条と平行になった軌条を通って再び地下へ戻り、次の射出に備える。射出はパレット1つにつき0.5秒。
- ニューディサイズは脱出時にモビルスーツの打ち上げのため使用したが、射出時の加速による衝撃、マス・キャッチャーによる回収時の衝撃により大半が破損。完全稼働機は5機のみだった。
- 宇宙港
- 中央政庁ドームから北へ2kmほど離れた場所にある、かつての採掘現場の跡地を利用して作られた宇宙港。マス・ドライバーへの搬入口が設けられている。定期連絡シャトルの入出港が行われており、ニューディサイズ艦隊や、エイノー艦隊の強襲揚陸艦がここへ寄港している。ニューディサイズが脱出する際にはパイロットらがここからシャトルで宇宙へと脱出した。
関連項目
- エアーズ市民軍
- 都市の防衛を名目として予備役兵で組織された防衛隊。隊員の年齢や経歴、経験に応じて部隊が編成され、「ホワイト・フォース」といったように部隊名が色分けされている。配備機体はヌーベル・ジムIIIとハイザック。
余談
- 戊辰戦争がモチーフの『ガンダム・センチネル』において、エアーズの攻防は会津戦争がモチーフになっており、エアーズ市が会津、パインフィールド市長が松平容保、ホワイト・フォースが白虎隊にそれぞれ相当する。