ラプラスの箱
ラプラスの箱(Box of Laplace)
『機動戦士ガンダムUC』に登場する用語。
ビスト財団が所有する箱。
その正体は連邦政府・軍だけでなく世界を覆す物とも言われている。ビスト財団はこれにより莫大な資金と権力を作り上げた。
その正体は、宇宙世紀元年を祝してセレモニーで公開されるはずだった、宇宙世紀憲章を認めた石碑。サイアムの眠る氷室を収めた航宙艦メガラニカに封印されている。
サイアムの持ち帰った「箱」はオリジナルの石碑であり、これにはレプリカにも刻まれた第六章に加え、後に言うスペースノイドの権利を明文化した七番目の章立てが存在していた。
これは、マーセナス首相の暗殺が連邦政府の自作自演であることを裏付ける決定的な証拠となりえたが、サイアムは上手く立ち回ることでそれを握る己を守りつつ「箱」を自身から切り離して秘匿し、同時にいずれ来たる「箱」の開放に備えてビスト財団を作り上げていた。
しかし、のちにジオン・ズム・ダイクンによって「宇宙に出た人間は、進化しうる」というジオニズム思想が世に出たことにより、スペースノイドの権利と政治への優先的介入を明記した「箱」の第七章碑文が、連邦政府にとって噂の域を超えた本物のタブーとなってしまったことで全てが狂い始める。もし「箱」の存在がジオニズムの信奉者達に知れれば、彼らはその碑文を根拠に政治的権利を主張するのは必然であり、それを拒む連邦との間に衝突が起こることも明らかであった。そのため連邦政府は、真実を隠匿し続けた。
この結果、「箱」=宇宙世紀憲章の石碑という単純な真相が世に出ることのないまま、サイアムの存在からその(政府にとっての)危険性だけが一人歩きし、ある種の都市伝説として広まっていくことになった。
宇宙世紀0096年、「シャアの反乱」の終結と、それに伴うネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルの戦死により、ジオンは反連邦勢力としての力を失う。生きながらえていたサイアムはこれを期に、連邦政府の絶対的統治のもとに人類が逼塞する危機を憂えて財団本来の目的である「箱」の開放を決断。
これを受けた当主・カーディアスは「箱」をネオ・ジオンの残党に譲渡しようとしたが、この時彼は連邦軍再編計画と銘打たれたニュータイプ殲滅計画「UC計画」のフラグシップ機であるユニコーンガンダムを利用することを考案。「ニュータイプ・デストロイヤー・システム」の中枢に細工を施し、特定の場所でシステムが起動するたび「箱」のありかへと少しずつ搭乗者を導いていく仕掛け「ラプラス・プログラム」をインストールした。
だが、この計画を嗅ぎ付けたマーサ・ビスト・カーバインは甥のアルベルト・ビストを通じ、インダストリアル7を訪れたガランシェール隊を強襲させる。混乱の中でカーディアスは死亡したが、ユニコーンガンダムは数奇な偶然を経て彼の妾腹の息子、バナージ・リンクスが受領し、戦火に身を投じる。
その後、紆余曲折を経て氷室へとたどり着いたバナージとミネバに対し、サイアムは「箱」の真実と己が元年に見た幻の意味、そして進化を続けてきた人間の可能性を語りつくして落命。「箱」の真実はミネバ・ラオ・ザビにより、世界に公表された。
それが後の世にどのような影響を与えたかは語られていないが、少なくともそれによって戦火が収まることがなかったのは確かである。