DUST計画(DUST Project) 編集

機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST』で実行されたコロニーの地球降下計画。

事の発端は、讃美歌の国が行ったサイド1スペースコロニー「ネオ・1バンチ」の攻撃予告に始まる。讃美歌の国の盟主である首切り王は100日後の戦闘開始を宣言し、対する地球連邦軍キュクロープスがその防衛に当たる事になった。しかし、キュクロープスを指揮するアーノルド・ジルベスターはその戦闘を利用してネオ・1バンチに集まった難民の口減らしを画策。この事実を知ったアッシュ・キングは、コロニーに住む9000万人の住民を救うべく思索を尽くし、戦闘中にコロニーごと戦域を離脱し、そのまま地球に降下させるという計画を打ち出した。同計画はコロニーの首脳陣を説得する形で実行に移され、レオ・オーフォムの発案によって「DUST計画」と名付けられた[1]

スペースコロニーそのものを質量弾として用いるコロニー落としとは違い、DUST計画はコロニーをそこに住む住民ごと地上へ「降ろす」必要があり、それにはコロニー落とし以上に複雑かつ、綿密なプロセスが必要となる。

まず、一般的にコロニー落としはコロニーを加速させる為に大気圏突入の際にコロニーを縦向きに降下させるが、DUST計画では空気抵抗による減速を狙い、コロニーを横向きにして大気圏突入を行う事になる。この際、地球の大気の圧力を受けてコロニー自体が高速回転する事になるが、その回転から住民を保護する為にコロニー内側のブロックを外壁から切り離し独立させ[2]、更にコロニーの構造物にクッション状の素材が活用されている事を利用して住民達にコロニー降下時の対ショック訓練を徹底させる事で極力安全に地球へ降下する事を画策。更に大気圏突入時にコロニー第1層内の空気を抜き軽量化。その上で複数のミノフスキードライブ搭載機を展開し、その光の翼から発生させた揚力場の内側にコロニーを乗せ、コロニーを地球の大気そのものに支えさせる事で、コロニーの地球降下を実現させている。

上記のアッシュの案は実行までにネオ・1バンチ側によってブラッシュアップが行われており、特に大気圏突入時に居住区が回転する問題は、コロニーの居住区に張り巡らされたエアチューブに圧力の高い部分と低い部分を作る事により、人為的に円形のコロニー内に上下を作る事で解消された。

計画の準備はコロニーの動向、特に人口の流れがキュクロープスに監視されていた為、人口流出を最低限に抑えた上で秘密裏に行われた。必要な資材、人員、戦力の確保といった下準備を97日で完了させ、キュクロープスと讃美歌の国の戦闘が開始された直後にコロニーに直結された資源衛星を核爆破。その反動を利用してコロニーごと逃走。以降、コロニーは「方舟(アーク)号」と呼称され、撤退戦を展開する事になる。

方舟側は戦場から逃走するのと同時に計画の安全性と正当性を主張する目的で全貌を全世界に向けて公表・配信を行うが、キュクロープスは失敗時の危険性や、地球への移民を認めない地球連邦の面目を保つ名目でコロニーを追撃。方舟側も保有戦力でこれを迎撃し、キュクロープスが取り込んだ讃美歌の国の残存戦力が無差別攻撃を行うというイレギュラーこそあったものの、大気圏突入寸前まで戦闘が継続された。計画の最終段階に入ると、キュクロープスの作戦参謀であるフォント・ボーがコロニーの地球降下は不可避と判断し計画に協力した事で、コロニーはキャリフォルニア湾へと「着陸」。着陸と同時にコロニーの底にあたる部分に穴が穿たれ、大量の海水混じりの土砂がコロニー内に誘導された事で、コロニーはその大地へと固定された。

なお、スペースコロニーが地球へ及ぼす環境への影響は凄まじいものであり、まず大気圏突入時に発生した上昇気流が積乱雲の急成長を促し、コロニーは巨大な暗雲を纏ったように降下。また、着陸時にコロニー内に混入した海水は真空状態だった外壁との間で減圧され水蒸気となり、高度2000メートル付近で放出、それが更なる積乱雲を生み出し、コロニーの周囲に3日に渡る暴風雨をもたらした。当然、コロニーが地球に着陸するという事は地球に巨大な山脈が唐突に現れるようなものであり、気流の変化による気象変動の問題も残されている。これに対して、アッシュはコロニーの外壁を解体し、時間をかけてゆっくりと中の空気を抜く事でコロニーを解体する事を提案。また、コロニー資材として使われているバイオ素材を活用した食糧問題の解決や農作、交易計画なども立案されている。

登場作品 編集

機動戦士クロスボーン・ガンダム DUST
初出作品。第36話でその計画が提唱され、そこから最終話にかけて同計画の顛末が描かれた。なお、物語はコロニーが地球に降下した所で終了しており、その後のコロニー解体作業については語られていない。
機動戦士クロスボーン・ガンダムX11
木星圏でカーティス・ロスコが同計画の詳細を知り、その成否に関わらず多大な政治的・経済的混乱が発生するであろう事を予測。その隙を伺う木星タカ派勢力の撲滅の為に行動を起こした。

関連用語 編集

コロニー落とし
DUST計画の母体となった、コロニーを質量弾として用いる軍事作戦。かつて第一次ネオ・ジオン抗争で行われたダブリンへのコロニー落としで、コロニーが構造を維持したままダブリン市街に突き刺さっていた事がDUST計画のヒントとなった。しかし、DUST計画は失敗すればコロニー落としに繋がる可能性もあり、タルス・バンスは成功率が50パーセントを切った場合はコロニー自体を自爆させる算段であった。

リンク編集

脚注編集

  1. これはレオが首切り王に「どれほどの理想も命も強大な力の前にはただの塵に過ぎぬのだ」と笑った事に対する反抗の意味がある。
  2. これは居住区3層、対放射線用スペース1層からなる多層構造を採用したネオ・1バンチコロニーだからこそ短期間での改修が可能となっていた。