ブリティッシュ作戦

ブリティッシュ作戦(Operation British) 編集

宇宙世紀0079年1月4日にジオン公国軍が実行したコロニー落とし作戦。宇宙世紀で初めて実施されたコロニー落としであり、作戦名は植民地を喪失した事で大英帝国が衰退した故事に因んだとされる。

一週間戦争の中盤、ジオン軍はサイド2・8バンチコロニーアイランド・イフィッシュを攻撃。これに際し、シーマ・ガラハウ麾下の海兵隊がコロニー内部へ猛毒のGGガスを注入[1]。約2000万人の住民を虐殺した上で核パルスエンジンをコロニーに取り付け、地球への落下軌道へと投入した。

コロニー落としの目的は核兵器の直撃にも耐えうる岩盤に守られた地球連邦軍本部ジャブローの破壊であった。対する連邦軍は、落下軌道に入ったコロニーに対してティアンム率いる宇宙艦隊による攻撃と、地上からの核ミサイルによる迎撃を敢行。しかし、阻止限界点までのコロニーの完全破壊は叶わず、損傷したコロニーは大気圏へと突入。この攻撃の結果、コロニーは大気圏突入の約40分後に崩壊、破片は大きく3つに分離し、先端のベイ部分がオーストラリアシドニーに、残りがバイカル湖、北米大陸にそれぞれ落着した。

コロニー落着時の被害は広島型原爆の約300万発分。TNT換算にして6万メガトンとも言われており、地球の自転速度も毎時1.2秒加速する事になった。

特に被害が甚大だったオーストラリア大陸は総面積の16%を消失し、シドニーのあった場所にはシドニー湾と呼ばれる巨大クレーターが形成された。また、衝撃波や津波、気象変動といった二次被害も発生し、これによる人的被害は23億人。総被害者数は40億人を超えるとされる。

ブリティッシュ作戦自体は当初の作戦目標を達成できずに失敗となり、この結果に満足を得なかったジオン軍は第2次ブリティッシュ作戦を実行するべくサイド5へと侵攻。その情報をキャッチした連邦軍艦隊との交戦によってルウム戦役が勃発した。

作戦自体は失敗に終わったとは言え、この一撃が与えた物理的・政治的影響は大きく、ルウム戦役後に締結した南極条約にも「大質量兵器の使用禁止」が盛り込まれる結果となった。

登場作品 編集

機動戦士ガンダム
第1話のアバンタイトルより、コロニーが都市部へと落着する場面が描かれている。ただし、この時点ではコロニーが地球へ落ちた経緯やどこに落ちたのかまでは語られていない。
ガンダムセンチュリー
作戦概要の初出。作戦の推移やコロニー落としの被害について設定が定められた。
機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY
『ガンダムセンチュリー』の設定に即した形で被害を被ったオーストラリア大陸の様子が描かれ、映像作品としては初めてシドニー湾が登場した。また、同作では過去にガスをコロニーに注入した経験を持つ人間としてシーマ・ガラハウが登場している。
宇宙の蜉蝣
『0083』で明かされなかったシーマ艦隊による毒ガス攻撃の様子が、シーマ本人が見た悪夢という形で語られた。
機動戦士ガンダム 第08MS小隊
アイランド・イフィッシュ出身者としてシロー・アマダが登場。GGガスがコロニー内で使用された際の様子が彼の回想という形で映像化された。
機動戦士ガンダム 宇宙のイシュタム
地球への落下軌道を進む最中のコロニーを舞台に、マゼラン級トータチスのクルーによる抵抗活動と、コロニー落としを阻止するべく奮戦する姿が描かれた。同作では、コロニーが3つに分離した理由として、連邦軍艦隊以外にトータチスに搭載されていた水爆の起爆があったとしている。
機動戦士ガンダム THE ORIGIN
ルウム編において『1st』とは異なる形でコロニー落としの経緯が描かれており、核パルスの装着と毒ガスの注入に加え、コロニー本体への耐熱処置が行われている。
被害の詳細な情報も出ており、『1st』と同じく3つに分離したコロニーのベイ部分がシドニーを直撃、中腹部がカナダ南西部で空中分解し北米大陸全域に破片の雨を降らせ、後方部がバイカル湖に直撃し東アジア全域に大地震と津波をもたらした。このあまりにも甚大な被害故に、連邦政府も暫くは被害の全容を把握出来なかった。更に、コロニー落としによって引き起こされた食糧不足や疫病の流行により、犠牲者は増え続け、これによって地球の総人口の半数が死に追いやられる事になった。
機動戦士ガンダムUC
導入部においてサイアム・ビストの夢という形でコロニーがシドニーへ落ちる様子を、OVA化に伴い改めて映像化。『1st』のシーンをオマージュしたシーンでは、画面の隅にシドニー・オペラハウスが追加され、落着した場所を明確化している。
機動戦士ガンダムNT
『UC』に引き続き、導入部において落着の様子が映像化。衝撃波により市民諸共、街が崩壊する様子が描写された。コロニー落着以前、リタ・ベルナルがコロニー落としを事前に察知し、このビジョンをヨナ、ミシェルと共有。協力して地元住民達を避難させ、多くの人命を救い、結果3人は「奇跡の子供たち」と呼ばれるようになる。しかし、3人の両親は死亡し、彼らは戦災孤児となってオーガスタ研究所で実験体としての生活を送る事になった。
なお、コロニー落としの描写を入れた事について富野由悠季氏は『1st』からの脱却が果たせていないとして非常に否定的な意見を述べている[2]

関連人物 編集

地球連邦軍 編集

ティアンム
シロー・アマダ
ナダ・チノミ
イライザ・オロマ

ジオン公国軍 編集

アサクラ
シーマ・ガラハウ

関連用語 編集

コロニー落とし
本作戦を含む、スペースコロニーを質量爆弾として利用する攻撃手段。
ジャブロー
本作戦における破壊目標。
GGガス (G3)
本作戦においてコロニー制圧の際に用いられた致死性の有毒ガス。コロニー内への注入方式は媒体によってバラつきがある。
ルウム戦役
本作戦後、第2次ブリティッシュ作戦の成否を分けるべくサイド5で勃発した大規模艦隊戦。
星の屑作戦
デラーズ紛争時にデラーズ・フリートが実行したコロニー落とし作戦。本作戦に続き、地球へコロニーが落着した事例となった。

リンク 編集

脚注編集