ヨンム・カークスの艦内放送

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ヨンム・カークスの艦内放送

ガランシェールに拾われたヨンム・カークスが、トリントン基地への移動中、シンブ根拠地隊各員へ向けて行った艦内放送。

内容

司令より、シンブ根拠地隊各員に達する。昨日発布した一二四八指令所に基づき、我々は予定通りの作戦行動に入る。作戦内容は次の通り。一、《ユニコーン》と呼称される連邦軍モビルスーツの奪取。二、《ユニコーン》専属パイロットの身柄確保。三、一及び二の目標達成後における脱出ルートの確保……

知っての通り、我が方の戦力は万全とは言えない。また、この作戦はネオ・ジオン本隊からの認証も受けていない。ジンネマン大尉以下、ガランシェール隊有志の者と独自に決行する作戦である。よって、諸君らには参加を拒否する権利がある。もとより基地を捨て、それぞれ別の場所に落ち延びようとしていた我々だ。いまさら『袖付き』の連中に頼られたからと言って、聞き入れる義務は金輪際ないと断言できる

しかし、作戦目標たる敵新型モビルスーツとは、『ラプラスの箱』なる機密情報が隠されているのだという。そこには連邦を覆す情報が隠されており、連邦のみならず複数の勢力がそれを追っているのだという。俄かには信じがたい話だが、自分はこれに賭けてみようと思う。死に花を咲かせるだけの価値があることを信じて、ジオンに最後の奉公をするつもりだ 全員、胸に手を当てて考えてもらいたい。なぜ我々はジオンの軍人であることをやめようとしなかったか? 幾度も決起の機会を逃し、雇われテロリストと蔑まれながら、それでもジオンの軍人であり続けたことに意味はあったか? 他人の評価は問題ではない。答はそれぞれの胸の中にある。これまでの人生を否定するのも、決めるのは自分自身だ。いま、なにを為すか。その選択が、未来と同時に過去をも決定するものだと知ってもらいたい

過去を捨て、新しい未来に生きるのもいいだろう。それはそれで勇気のいることだと思う。だが自分は、自分の過去を否定したくはない。無意味であったなら無意味であったなりに、けじめをつけたく思う。これは自分の独善であって、諸君らにつきあう義理はない。それぞれに最良と思える選択をしてほしい。そして、どちらの道を選ぶにせよ、最後にこんな言葉しか贈れない無能な司令についてきてくれたことに、心から感謝したい。ジーク・ジオン。……終わり

登場作品

機動戦士ガンダムUC(小説版)
第7巻より。

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